3D Printing Basic Knowledge 3Dプリンターの基礎知識

3Dプリンターには7つの造形原理があり、
まずその理解が必要不可欠

3Dプリンターと一口に言っても価格は数万円から数億円まであり、造形できる材料も造形方式ごとに大きく異なっています。必要とする3Dプリンターがどの方式かをまず明確にする必要があります。
ここでは7つの造形原理を説明すると共に、それぞれの方式で造形できる材料について解説し、各方式の特徴についてまとめましたので、まずはここで3Dプリンターの基本をしっかりと理解してください。

造形方式

3Dプリンターには、ASTM国際会議で分類されたように下記の7種類の方式があり、それぞれにおいて最近の動向も大きく異なっています。

ASTMの正式名称 日本語名称 通称
Material extrusion 材料押出法 熱溶解積層法 FDM
Vat photopolymerization 液槽光重合法 光造形法 SLA
Sheet lamination シート積層法
Binder jetting 結合剤噴射法
Material jetting 材料噴射法 インクジェットUV硬化積層法
Powder bed fusion 粉末床溶融結合法 レーザー焼結積層法 SLS SLM
Directed energy deposition 指向性エネルギー堆積法

造形材料

各造形方式と適合材料について下記の表にまとめています。
方式ごとに造形可能材料は異なっており、目的とするものを造形する場合、まずは方式の選定が重要となります。

造形材料 材料押出法 液槽光重合法 シート積層法 結合剤噴射法 材料噴射法 粉末床溶融結合法 指向性エネルギー堆積法
熱可塑性樹脂
紫外線硬化樹脂
金属
セラミック
1
材料押出法Material extrusion
この方式は、リールに巻かれた直径1.75 mmのフィラメントと呼ばれる樹脂製の線材を加熱溶融し、ノズルより押し出しながら、造形物のスライスされた断面のパターンを一筆書きのように一層ずつ積み重ねながら造形していきます。数万円の個人ユースから数千万円台の本格的な製造用まで幅広い製品が市販されています。最も個人に身近な3Dプリンターであり、扱える樹脂の種類も多いのですが、造形物の精度や表面状態には課題もあります。
2
液槽光重合法Vat photopolymerization
液槽光重合法(光造形法)は液状の光硬化性樹脂に紫外線レーザー等を照射して硬化させる方法です。光硬化性樹脂で満たされた容器の液中に造形テーブルが設置されており、このテーブル上に造形一層分の液が薄く広がっています。この一層分の液に向けて紫外線レーザーで固化させたい部分のみ照射して一層分を造形します。一層形成されるとテーブルが下降し、造形された面上に新たな液が満ち、この面を再び造形するという動作を繰り返していきます。最近では、透明な容器の底部からプロジェクターに使われているDLPで光をあて、底部で一層分を造形するごとに吊り上げていく吊り上げ方式が、高品質と低価格化を実現し、市場を拡大しています。
3
シート積層法Sheet lamination
シート積層法では、コピー用紙や樹脂フィルムなどのシート状の材料を接着剤などにより貼り合わせながら、外形をカットして3D形状を積み上げていきます。この方式は長年研究されてきましたが、造形スピードや扱える材料に制限があるため、市販されている製品は少ないと言えます。唯一、市販のビジネス用インクジェットプリンタで表裏印刷したコピー用紙を自動で貼り付けとカットを行っていく3Dプリンターが市販されています。
4
結合剤噴射法Binder jetting
現在この方式で最も普及しているのは、石膏を使ったフルカラーの3Dプリンターです。平らな造形テーブルの上に造形材料の石膏粉末を積み上げ、それをローラーで指定高さとなるように石膏の粉を掻き取り、薄い石膏の粉末層を形成します。その上方からインクジェットヘッドというアクチュエーターにて着色用インクと粉末の固着用バインダーを噴射し、粉末を着色し固めます。最近では石膏粉末の代わりに樹脂粉末、金属粉末、セラミック粉末、人工骨の材料であるカルシウム系の粉末などが使われてきており、今後も様々な粉末材料が登場してくるものと思われます。
5
材料噴射法 Material jetting
この方式は、紫外線硬化インクなどの液体材料をインクジェット法により造形部にのみ塗布し、その直後にUVランプによりインクを硬化させ造形物の一層を形成します。これを繰り返し、高さ方向に硬化したインクを積み上げていきます。最近では、インク中にセラミック粒子や金属粒子を分散させた特殊インクを用いてセラミック部品や金属パーツを造形する3Dプリンターが市場に出回っています。
6
粉末床溶融結合法Powder bed fusion
レーザーや電子線を特殊な雰囲気下で金属や樹脂の粉末に照射して粉末を焼結させ、冷却による固化の後に、その焼結面の上に再び粉末をローラーなどにより指定厚み積層し、焼結を繰り返す方法です。装置の価格は数百万円から数億円までのレンジがあり、樹脂や金属による部品の製造に使われています。3DRIでは、この方式で驚異的な低価格を実現した3Dプリンター「Sintratec Kit」を販売しています。
7
指向性エネルギー堆積法 Directed energy deposition
この方式は、レーザー光を造形面に照射し加熱しながら、レーザー光の脇から金属粉末を吹き付け、加熱面上で肉盛りしていく造形方式です。造形後の表面はかなり粗れているため、造形後に表面をミリングするハイブリッド化がなされています。